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コース・デザイン

遠隔学習の活性化

吉田雅巳

Source:
吉田雅巳 1999, "遠隔学習の活性化",In 「大学授業の改善」,1章学習の動機づけ.自主学習を支援する4-Case 7,伊藤秀子,大塚雄作編,東京:有斐閣出版,pp.48-53.

Yoshida, M. 1999, "The Activation of Distance Learning", Media Education Development Centre--Research Development Department, pp.38-43.

場面設定

授業科目:専門科目,ゼミ,課題研究などで有効

対象学生:3,4年で有効

学習目標:
@自主学習力を高めることができる。
Aコミュニケーション技能を意識して発揮できる。

利用メディア:TVカンファレンスシステム,通信衛星(SCS),パソコンカンファレンスシステム。

授業改善のポイント:
@情報
を精選する。概要をつくる。
Aプレゼンテーション技能
Bメディア活用能力を応用する

 これまで遠隔教育は,高等教育に通学困難な若年就労者にキャリア・アップの機会を提供したり,成人に生涯教育,リカレント教育として学習機会を提供する役割の教育として理解され,放送教育による公開大学などの形で認知されていた。海外諸国でも遠隔教育を一般大学と区別し,学校外教育(Non-formal Education)と位置づけている国もある。しかし社会の情報化を受けて,遠隔的手法が効果的な教育手法として授業で活用できるようになってきた。加えて大学の単位認定基準が改訂され,遠隔授業の単位や放送大学の単位が一般大学内で認定されるようになり,さらには遠隔地の他大学の授業をメディアを経由して履修・受講することも可能になった。このように現在の大学では,対面学内完結型教育への執着がしだいに消えつつある。

 広まる学習拡張型遠隔学習

 遠隔的教育を大別すると,歴史的に放送・通信メディアを通じて浸透してきた公開大学型の教育(社会要請型遠隔教育)と,対面授業に技術革新が導入されて発生した教育(学習拡張型遠隔学習)がある。後者は,設備規模としては前者より小規模で,機器操作が簡便であるものが使われ,見方を変えると最もアプローチのしやすいマルチメディア活用授業でもある。さらに,この手法は交流メンバーが完結的で相互コミュニケーションがあり,伝達資料情報・発言内容,授業形態への制約(著作権など)が少ない。そこで,本稿では大学授業改善の中で導入の盛んな後者の展開に焦点を絞り議論を進める。

 問題の所在

[通信メディアの導入と授業改善

 表面的には遠隔的教育を導入して

・機関協力により多様な科目を提供できる。
・授業内容をよりグローバルに展開できる。
・距離的,時間的制約を超えた授業を展開できる。

のような大学の地理的制約を克服する効果が見えるが,さらに導入に伴い

・教師の授業資料の準備と講義の技術が向上する。
・学習者の自主的な学習活動の質が向上する。

といった潜在的に内在する,副次的かつ重要な教育内容改善の効果をもたらす。

 改善のためのポイント

 研究知見では,適切な活用がなされた場合,対面授業との教育効果には差がないという報告が多い(たとえば,Barry (1995)の研究)。だが機器の伝達性の限界には配慮が必要である。そこで教師は対面授業よりさらに学生の学習活動に注目し,情報の精選やわかりやすい説明をする必要がある。

 学生の学習に関する基礎的教育知見として,学習者の情報の認知に関した特性研究が2系統存在する。1つはSeamans(1990)のいうシンボル処理研究で,どのように情報が知覚,解釈,記憶されるかを探究したもので,もう1つはStriebel(1991)の提唱する状況認知研究で,情報をどのように関連させて学習するかを調べたものである。

 手元資料の情報源としての価値は最大で,その準備が十分であれば,結果として学生の学習活動が中心になり,教師は要点指導,付随資料提供をしたり,あるいは議論,交流,共同活動等を支援する形で学習活動支援する。

学習への集中

 メディアが学習−教授環境に常に介在する。また,機器の情報表現力に制約(たとえば,画面の大きさ)があるので,学生は,

・教室の特定位置への意識集中(情報位置への集中)
・概要された提示情報の背後の含意内容の読み取り(情報の集約)
・切り替えられる情報への即応(情報の一時性)

ができるようになる。

 場面と類型

[授業形態と学習形態

講義:放送的に授業を公開すれば,効果はあまり期待できないが,授業中リアルタイムの交流があると学習保持率が20%から70%に向上したという知見(Millbank, 1994)もあり,これを取り入れれば次の「議論,交流型授業」との差異は縮まる。

議論,交流型授業:新たな授業方法であるが,メディアの交流チャンネルが限られるので,教師の役割(時間の管理,議論の整理,焦点化など)が重要である。

スキル習得型授業:遠隔地からの専門家の指示が学習を深める。

遠隔伝達型授業:教師が取材先(遠隔地)から教室にレポートする。

 学習改善の内容

 Reid(1996)によれば,メディアを授業で活用しようとする態度は,単に技術を伝統的授業に付加しようとする態度よりも,大きな学習効果を導く。従って,学習者に委ねるだけでなく教師も遠隔学習における自主学習支援をすることが必要である。

 前提

教師の側で,遠隔学習に際して

・印刷資料の事前準備・配布(Hiltz, 1995)
・教育内容情報の精選/概要,情報の清書(Sherry,1995)
・情報提示モダリティーの選択
・事例を用いた解説の準備
・プレゼンテーション技能の熟達(メディアプレゼンテーション(Phillipsら,1996)を含む)
・機器操作への適応努力(Shelly(1996)は操作の習熟が授業の成否に影響するとしている。)
などの準備がなされている必要がある。

 学習の改善

情報伝達が十分に行われる通信環境を実現しても,学生は教師との物理的隔離を意識する。さらに,教師も他人行儀なよそよそしい口調に変わる。さらに,メディアで結んだサイト間コミュニケーションは対面教育と同等ではなく,話者を選択的に遠隔通信機器の前に立たせる必要があり高揚させる。結果的に学生は,

・他の授業の参加者を意識した発言
・精選した質問

をするようになる。Charp(1994)はこのような遠隔学習の環境では自主的学習に取り組む必要があることを述べている。実際,遠隔環境での学習に慣れが生ずると,

・提示情報の含意や提示情報を超えて内容の意味を追究(Salomonの行った学生の積極的学習生起の調査結果)
・Pea(1994)の弁証法的な思考への変化
・対面授業よりもグループ学習での協力が密になる(Maxcy, 1994)
などの学習の改善が導かれる。

 学習環境の拡張

・教室外資料を積極的に利用する授業が展開される。
・カメラアングルにより対面授業では体験できない視点が作れる(演示実験など)。
・交流では教室の教師より,むしろ交流相手から多くを学ぶ(L.R.A.Inc., 1995)。
・授業の記録が容易に行える。

 問題点

・Ravitch(1987)は不必要なエデュテインメント(飾り立て,演出)が意図しない授業効果(達成目標のすり替えなど)を生むことを警告している。
・ライティングは交流で,レンズの受光能力を補うのに重要な要素だが,サイトの学生の発言を躊躇させる。

 参考文献

  • Charp, S., Viewpoint. The On-line Chronicle of Distance Education and Communication, Internet News: alt.education.distance, May 3, 1994Seamans, M.C., New Perspective on User-centered Design, Interchange Technical Writing Conference. Lowell: Lowell University, 1990
  • Ravitch, D., Technology and the Curriculum, In What Curriculum for the Information Age?, White, M.A.(ed.), NJ: Lawrence Erlbaum Associates, 1987
  • Reid, K.A., Student Attitudes Toward DIstance Learning, Web Page: www.lucent.com/ced1/stdtatt.html, 1996
  • Streibel, M.J., Instructional Plans and Situated Learning in Instructional Technology, past, present, and future, Anglin, G.J.(ed.), Englewood, pp.117-132, 1991

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