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アブストラクト: 司書教諭の情報化に関する教材と遠隔教育支援システムを開発し、これを利用した遠隔講習を実施した。同じ教材を利用して集合講習も実施し、受講者に対するアンケート調査の結果を比較・検討した。これにより、遠隔教育支援システムを用いた遠隔講習は、集合講習と少なくとも同等の評価を受け、代替手段として有効であるばかりではなく、いくつかの点で集合講習よりも優れた効果が得られることが明らかになった。
キーワード: 遠隔教育 学習形態 システム評価 教材開発 大学教育
新しい学校づくり
本研究は、教育内容と教育方法のそれぞれにおいて、新しい学校の在り方を模索している。本研究で扱った教育内容は、学校図書館司書教諭の情報化である。学校図書館法により、学校図書館は学校に必須の施設とされているにもかかわらず、授業においてはほとんど活用されていないのが現状である。全国学校図書館協議会による『読書に関する調査報告書』(平成6年3月実施)によれば、小学校では主として読書の場、中学校では主として友人との交流の場、高等学校では主として試験勉強の場となっている。しかしながら、総合的な学習の時間の創設を中心とする近年の教育改革においては、従来の知識受容型の学習から学習者自身による主体的学習への変化が目標とされ、学校図書館は主体的な学習を実現する場としての役割が期待されている。
そのためには学校図書館に人を配置する必要があり、これまで名目上の存在であった学校図書館司書教諭が、実際に発令されるようになった。さらに、学校図書館司書教諭は学校におけるメディアスペシャリストとして、インターネットの教育利用を中心とする学校教育の情報化において、情報化推進リーダーの補佐役となることが期待されている。
このような学校図書館をめぐる状況の変化に対応して、学校図書館司書教諭養成カリキュラムが改訂され、情報関連の知識・技能が学校図書館司書教諭に必要な知識・技能として位置づけられるようになった。本研究で開発した教材は、この学校図書館司書教諭の情報化に関する教材である。学校図書館が学習情報センターとなることにより、これまでの学校の有り様を、学習者の主体的な学習の場としての新たな学校へと変えていくことができると考えられる。
一方、本研究で用いた教育方法は、インターネットや学内LANを利用した遠隔講習である。遠隔講習は、同期型と非同期型に大別することができる。同期型は別々の場所にいる学習者が同時に学習を進めるものであり、放送大学のように一方向性のものと、SCS(Space
Collaboration System)のように双方向性のものとに分けることができる。同期型の場合は、空間(距離)の制約の克服が主たる目的であると考えられる。一方、非同期型の遠隔講習は、個々の学習者がそれぞれ自分の決めた時間に学習を行い、受講者全員が同時に学習する必要はない。非同期型は、時間の制約の克服が主たる目的であると言える。本研究で扱う遠隔講習は、非同期型の遠隔講習である。
広大な国土を持つ国とは異なり、国土が狭い日本の場合には、遠隔講習は基本的に時間が自由にならない成人のための教育手段と見なされがちである。あるいは、教育上の限られたリソース(特定の講師など)を共有する手段という見方もできる。いずれにせよ、学校教育と関連づけて考えられることは少なかった。しかし、総合的な学習の時間によって学校外での体験学習の機会が増えれば、児童・生徒が学校に来ることなく一日の学習が終了するような事態も生じてくることが予想される。その場合でも、遠隔講習のシステムがあれば、その日のうちに学習結果を教師に報告したり、他の児童・生徒と共有したりすることができる。このように、遠隔講習という手段は学校教育のスタイルを変えていく手段となりうると考えられる。
今回の発表では、主として遠隔講習の特性について報告する。なお、本発表は、情報処理振興事業協会(IPA)による「教育の情報化推進事業(平成10年度補正予算事業)の一事業として、財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)が行った『司書教諭・SE等の連携による教員の情報化研修支援システム開発』の、「司書教諭研修分科会」の成果に基づいている。
目的
遠隔講習は、集合講習に参加しづらい学習者のための講習手段と考えられることが多い。この解釈では、遠隔講習はあくまでも集合講習の代替手段と位置づけられることになる。
しかし、遠隔講習に講習支援システムを導入することにより、利用した学習には、従来の集合講習を超えた積極的な学習効果が生じることも考えられる。そこで本実験においては、集合講習が可能な学習者であっても、講習支援システムを利用することによって、集合講習以上の学習効果が得られることを検証する。また、講義タイプと演習タイプにおいて、講習支援システムを用いた遠隔講習の効果がどう異なるかを明らかにする。
この検証のために、学校図書館司書教諭の情報化講習用教材と、遠隔講習支援システムの開発が行われた。
教材は完結した「自習型」の教材ではなく、基本的に講師が自分の講習内容に合わせて選択して用いる「素材型」の教材である。これは、学校図書館先進校の授業を記録したDVD教材、静止画・動画・インタビューなどを記録したCD-ROM教材、著作権に関する講話を記録したビデオ教材からなる。ここに含まれる素材をネットワーク経由で閲覧するのは非現実的であるため、遠隔講習の場合にはこれらの教材を補助教材として配布して用いた。
講習支援システムは、講師および学習者間のコミュニケーションを支援するためのシステムであり、書かれたメッセージがすべての学習者に公開される「掲示板機能」と、学習者が講師と個別に対話できる「質問箱」機能を持つ。講師と学習者はインターネット経由で講習支援システムにアクセスし、ブラウザを利用してメッセージの閲覧や書き込みを行う。このシステムの持つ掲示板機能は、スレッド管理機能やメッセージに対する返信機能などを持たない、かなり原始的なものである。これである程度の効果が得られるならば、より洗練されたシステムを利用することによって、より高い効果が得られることが予測される。
本研究では、講習支援システムを用いた遠隔学習が集合講習の代替手段として有効であるだけではなく、集合講習が可能な学習者であっても講習支援システムを利用した遠隔講習によって集合講習以上の学習効果が得られることを主張する。このため、遠隔講習支援システムを利用した遠隔講習の「有効性」として、以下の2つのレベルを区別して評価する。
- 等価性
- 講習支援システムを用いた遠隔講習は、基本的に集合講習と同等の教育効果を持ち、集合講習の代替手段として利用可能である。少なくとも、集合講習と比較して致命的な欠陥を持たず、一部に集合講習を取り入れる(スクーリング)などの補完措置を採る必要がない。
- 優越性
- 講習支援システムを用いた遠隔講習は、何らかの点において集合講習よりも優れた教育効果を持つ。このような利点を活かせる場合には、集合講習の代替手段ではなく、積極的に採用されるべき優れた教育手段である。
本研究では、講習支援システムを用いた遠隔講習の「有効性」を、このような「等価性」と「優越性」として捉え、集合講習と遠隔講習を比較する実験デザインによって、有効性を検証する。
なお、本研究では以下の理由により、講義タイプと演習タイプに分けて実験を行う。講師主導の講義タイプの講習の場合には、もともとコミュニケーションが一方向的であり、リアルタイムのコミュニケーションもそれほど必要とされないことから、遠隔講習という形態でもそれほど問題は生じないことが予想される。一方、演習タイプの講習の場合には、双方向かつリアルタイムでのコミュニケーションが要求されることから、遠隔講習には向いていないことが予想される。タイプ別の実験デザインとなっているは、これを確認するためである。
仮説
検証すべき仮説は、「集合講習が可能な学習者であっても、講習支援システムを利用することによって、集合講習以上の学習効果が得られる」ことである。これを検証するために、以下の下位仮説を検証する。
- 学習者は自分のペースで学習を進めることができる
- 学習者の学習スタイルが主体的なものになる
- 講師・学習者間のコミュニケーションが促進される
- 講習に対する総合的な評価が向上する
実験方法
集合講習が容易な大学生を対象に、集合講習と遠隔講習を行い、講義タイプと演習タイプに分けてアンケート調査を行う。収集したデータをもとに集合講習と遠隔講習の比較を行い、上記の仮説を検証する。
アンケート項目は、メディア教育開発センターのメディア活用研究開発系で行なわれている「教授・学習評価支援システムの研究開発」のデータベースから、今回の実験目的に関連する項目を抽出した。アンケート項目のカテゴリーを表1に示す。
表1 アンケート項目のカテゴリー
| カテゴリー |
仮説 |
項目数 |
| 学習過程の自己制御 |
a |
6項目 |
| 自主的な学習 |
b |
9項目 |
| コミュニケーション |
c |
5項目 |
| 総合的な評価 |
d |
8項目 |
| 講師の特性の反映 |
− |
16項目 |
| その他 |
− |
9項目 |
表1のカテゴリーのうち、「講師の特性の反映」に関しては少し解説が必要である。集合講習の場合には、教師の熱意や誠実さなどが伝わることによって、学習者の学習意欲が高められることがある。逆に、声が小さくて聞き取りにくかったり話が単調だったりする場合には、学習意欲を減退させることもある。
講習支援システムを用いた遠隔講習の場合には、このような講師の特性が伝わりにくくなることが予想されるため、このカテゴリーをアンケートに加えることにした。ただし、これは利点とも欠点とも言えないため、有効性に関する仮説の中には含めなかった。
結果的には、このカテゴリーの項目では顕著な差が見られず、遠隔講習の場合にも講師の特性が講習に反映されることがわかった。
| 実験協力者及び実験期間 |
| 集合講習(講義タイプおよび演習タイプ) |
| 実験協力者:大学生36名 |
| 実験期間:1999年12月15日、12月22日の2日間 |
| 遠隔講習(講義タイプおよび演習タイプ) |
| 実験協力者:大学生11名 |
| 実験期間:1999年12月16日〜12月28日 |
この期間中、講習支援システムは24時間稼動しており、学習者は自分の都合のよい時間に、講習支援システムにアクセスし、配布された補助教材を併用しながら学習を行った。
比較のため、集合講習・遠隔講習ともに同一の講師が、実験用に作成した司書教諭講習教材を用いて、基本的に同じカリキュラムの講義を行った。
また、講習の時間を意識的に講義タイプと演習タイプに分け、講義タイプの講習終了時に講義タイプ用のアンケート調査を、演習タイプの講習終了時に演習タイプのアンケート調査を実施した。
結果
(1)講義タイプの講習における比較
まず、講義タイプの集合講習および遠隔講習で得られたデータを比較し、集合講習と遠隔講習で顕著な差の見られる部分を抽出する。手順は以下の通りである。
- アンケート調査の回答をY反応(Yes反応)とN反応(No反応)に分ける。
Y反応:「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」
N反応:「そう思わない」+「どちらかといえばそう思わない」
質問には4段階評定で答えるため、回答はすべてY反応/N反応もしくは無回答に分類される。
- 実験協力者全体に対するY反応とN反応のパーセンテージを求める。
- 集合講習と遠隔講習で反応の差の大きい項目を抽出する。
集合講習と遠隔講習のY反応(もしくはN反応)のパーセンテージを比較し、その差が30%以上のものを、差が大きい項目として抽出する。
上記の手順により、表2の項目が抽出された。この結果に基づいて仮説を検証する。なお、これら以外の顕著な差が見られなかった項目については、「等価性」が示されたと考えられる。
表2 講義タイプの講習において、集合講習と遠隔講習で顕著な差が見られた項目
| 仮説 |
アンケート項目 |
Y反応(%) |
| 集合 |
遠隔 |
| a |
自分の生活と学習を両立させるのが困難であった |
19.4% |
72.7% |
| 自分の時間的な問題が学習上の支障となることがあった |
44.4% |
72.7% |
| 講義の途中に適度な息抜きをした |
50.0% |
81.8% |
| 講義の時間配分を適切に行なった |
75.0% |
30.0% |
| b |
わからないことは講師に質問した |
5.6% |
72.7% |
| 内容の論理的な一貫性に留意しながら学習した |
47.2% |
81.8% |
| c |
講師と受講生とが交流する機会が設けられていた |
13.6% |
63.6% |
| 受講生同士で交流する機会が設けられていた |
16.7% |
72.7% |
| 受講生への問いかけが適切に含まれていた |
36.1% |
72.7% |
| d |
改善の余地が多い講義であった |
33.3% |
63.6% |
| さらに深く学習しようという意欲の起きる講義であった |
55.6% |
90.9% |
| 集合/遠隔講習は講義の手段として有効なシステムであると思う |
69.4% |
100.0% |
| |
図・表・写真などがもっとあるといいと思った |
80.6% |
36.4% |
| 取材による現実素材(映像・写真等)の利用頻度をもっと増やすべきだ |
72.2% |
27.3% |
学習者は自分のペースで学習を進めることができる
この仮説に関連した項目は、以下の4項目である。
- 自分の生活と学習を両立させるのが困難であった(19.4%,72.7%)
- 自分の時間的な問題が学習上の支障となることがあった(44.4%,72.7%)
- 講義の途中に適度な息抜きをした(50.0%,81.8%)
- 講義の時間配分を適切に行なった(75%,30%)
この中で、「講義の途中に適度な息抜きをした」という項目は、遠隔講習において学習者が自分のペースで学習を進めていることを示しており、仮説を支持する結果となっている。
それ以外の3項目を解釈するためには、学習者の状況を考慮する必要がある。
まず、遠隔講習の方が「自分の生活と学習を両立させるのが困難であった」ことに対しては、集合講習が正規の授業時間に行なわれていることが挙げられる。つまり、もともと学習のための時間を確保してある学習者にとっては、その時間に講習を行なっても生活との両立が問題になることはない。ところが、遠隔講習のように、それ以外の時間に学習が必要になると、そのための時間を作ることが困難になってくる。これが、「自分の時間的な問題が学習上の支障となることがあった」という項目に現れている。
また、集合講習の場合、講義の時間配分を行うのは講師であり、学習者はそれが適切であるかどうか評価するだけである。一方、遠隔講習の場合には、学習者自身が時間配分を行う必要がある。これがうまくいかなかったため、遠隔講習では「講義の時間配分を適切に行なった」という反応が減っていると考えられる。さらに、この結果は前の2項および後述の仮説とも関連している。以下で見るように、遠隔講習において学習者はかなり主体的かつ意欲的に学習を進めている。このため、集合講習のように時間が予め決まっていないと、講習に対して予想以上に時間を割く結果になる。そのため、自分の生活時間を侵食し、これが「自分の時間的な問題が学習上の支障になることがあった」という反応につながり、また講義の時間配分を適切に行なえなかったという結果につながった、と考えられる。
以上のように、一見すると遠隔講習では自分のペースで学習しづらいかのような結果であったが、詳細に検討すると、学習者が自らのペースで学習を進めることができたために問題が生じたことがわかる。
学習者の学習スタイルが主体的なものになる
- わからないことは講師に質問した(5.6%,72.7%)
- 内容の論理的な一貫性に留意しながら学習した(47.2%,81.8%)
この2項目は、学習者が主体的に学習を進めていることを示している。
講師・学習者間のコミュニケーションが促進される
- 講師と受講生とが交流する機会が設けられていた(13.6%,63.6%)
- 受講生同士で交流する機会が設けられていた(16.7%,72.7%)
- 受講生への問いかけが適切に含まれていた(36.1%,72.7%)
遠隔講習では学習者が個別に学習するため、コミュニケーション不足が生じると批判されることがある。しかし、この3項目の結果を見れば、講習支援システムを利用した遠隔講習が、コミュニケーションの上で集合講習よりも有効であることがわかる。
これは、遠隔講習が持つコミュニケーションの問題を講師が認識しており、コミュニケーション不足にならないよう十分に配慮するため、むしろ集合講習よりもコミュニケーションの機会が設けられることを示していて興味深い。この点に関しては、研修支援システム(特に掲示板機能)がなければ、このような結果にはならなかったと思われる。
講習に対する総合的な評価が向上する
- 改善の余地が多い講義であった(33.3%,63.6%)
- さらに深く学習しようという意欲の起きる講義であった(55.6%,90.9%)
- 集合/遠隔講習は講義の手段として有効なシステムであると思う(69.4%,100%)
遠隔講習の方が「改善の余地が多い」という評価が多かった点については、講師にとって遠隔講習を行うのは今回が初めてであったことを考慮する必要がある。また、改善の余地が多いにもかかわらず、次の2項目において集合講習よりも高い評価が得られたことは、講習支援システムを用いた遠隔講習の可能性の大きさを示している。
その他
- 図・表・写真などがもっとあるといいと思った(80.6%,36.4%)
- 取材による現実素材(映像・写真等)の利用頻度をもっと増やすべきだ(72.2%,27.3%)
この2項目は、講習支援システムを用いた遠隔講習では、集合講習よりも多様な素材が利用されていたということを示している。これは、遠隔講習では学習の多様性や自由度が認められているため、講師の側では集合講習よりも豊富な資料を提供することになったと解釈される。これは検証実験の開始時点では予測していなかった結果である。
(2)演習タイプの講習における比較
次に、演習タイプの集合講習及び遠隔講習で得られたデータを比較し、集合講習と遠隔講習で顕著な差の見られる部分を抽出した。講義タイプと同様の手順により、表3の項目が抽出された。
表3 演習タイプの講習において、集合講習と遠隔講習で顕著な差が見られた項目
| 仮説 |
アンケート項目 |
Y反応(%) |
| 集合 |
遠隔 |
| a |
メモをとるための間が適切に設けられていた/とった |
66.7% |
100.0% |
| 自分の生活と学習を両立させるのが困難であった |
25.0% |
90.9% |
| 講座の聴講を途中で休もうと思うことがあった |
44.4% |
81.8% |
| 自分の時間的な問題が学習上の支障となることがあった |
41.7% |
81.8% |
| 演習の時間配分を適切に行なった |
55.6% |
9.1% |
| b |
わからないことは講師に質問した |
8.3% |
72.7% |
| c |
講師と受講生とが交流する機会が設けられていた |
19.4% |
81.8% |
| 講師ともっと交流する機会を持ちたい |
50.0% |
81.8% |
| 個別指導は十分に行われた |
22.2% |
81.8% |
| 指導のコメントは適切だった |
61.1% |
100.0% |
| d |
さらに深く学習しようという意欲の起きる演習であった |
47.2% |
90.9% |
| 受講生自身に考えさせる工夫が見られた |
63.9% |
100.0% |
| |
取材による現実素材(映像・写真等)の利用頻度をもっと増やすべきだ |
63.9% |
27.3% |
学習者は自分のペースで学習を進めることができる
- メモをとるための間が適切に設けられていた/とった(66.7%,100.0%)
- 自分の生活と学習を両立させるのが困難であった(25.0%,90.9%)
- 講座の聴講を途中で休もうと思うことがあった(44.4%,81.8%)
- 自分の時間的な問題が学習上の支障となることがあった(41.7%,81.8%)
- 演習の時間配分を適切に行なった(55.6%,9.1%)
この中で、「メモをとるための間が適切に設けられていた/とった」という項目は、遠隔講習において学習者が自分のペースで学習を進めていることを示しており、仮説を支持する結果となっている。
それ以外の4項目は、講義タイプの場合と同様に学習者の状況を考慮することによって解釈される。その解釈も、基本的には講義タイプと同じである。
講義タイプであろうと演習タイプであろうと、もともと学習のために空けてある時間に講習が行われる場合には、時間的な問題が生じることは少ない。遠隔講習では、自分で時間の都合をつけて学習時間を生み出さなければならないため、集合講習よりも時間的な問題が現れてくる。また、演習を積極的に行なったため、この問題がより深刻になったと考えられる。
以上のように、講義タイプだけではなく演習タイプにおいても、学習者が自らのペースで学習を進めることができたために問題が生じたと考えてよい。
学習者の学習スタイルが主体的なものになる
- わからないことは講師に質問した(8.3%,72.7%)
この項目は、学習者が主体的に学習を進めていることを示している。
講師・学習者間のコミュニケーションが促進される
- 講師と受講生とが交流する機会が設けられていた(19.4%,81.8%)
- 講師ともっと交流する機会を持ちたい(50.0%,81.8%)
- 個別指導は十分に行われた(22.2%,81.8%)
- 指導のコメントは適切だった(61.1%,100.0%)
演習タイプにおいては講義タイプ以上に、講習支援システムを利用した遠隔講習が、コミュニケーションの上で集合講習よりも有効であることが、結果に現れている。
集合講習では講師自身がその場に臨席しているため、質問の受付や机間巡視など学習者とのコミュニケーションが採りやすいような気がするものである。しかし、実際にはこのようなコミュニケーションは、遠隔講習に顕著に見られることが明らかになった。
注意が必要なのは、「講師ともっと交流する機会を持ちたい」という反応が遠隔研修に多いという結果は、遠隔講習の否定的な評価ではないという点である。遠隔講習の方が交流の機会が多く、かつ十分な個別指導が行われたため、学習者が講師との交流の機会の重要さを認識したと解釈すべきである。同じ講師でありながら集合講習よりも遠隔講習の方が「指導のコメントは適切だった」と評価されていることからも、有効な交流があったという結論が妥当であると判断できる。
このような有益な個別指導が可能になったのは、講習支援システムの「質問箱機能」や「掲示板機能」が有効に働いたからである。集合講習におけるその場での指導とは異なり、講習支援システムを用いた遠隔講習では十分に考えたり資料を確認したりした上で指導できるため、指導の質の向上につながったと考えてよいだろう。
講習に対する総合的な評価が向上する
- さらに深く学習しようという意欲の起きる演習であった(47.2%,90.9%)
- 受講生自身に考えさせる工夫が見られた(63.9%,100.0%)
この2項目は、集合講習に対して遠隔講習の総合的な評価が高いことを示している。
その他
- 取材による現実素材(映像・写真等)の利用頻度をもっと増やすべきだ(63.9%,27.3%)
この項目は、講義タイプの講習と同じ傾向を示している。
考察
結果の項で検討したように、講習支援システムを用いた遠隔講習は、集合講習に勝る利点を持っている。これは2つの要因に分けて考えることができる。
第一に、学習者の変化である。学習者は自分のペースで学習を進めるとともに、その学習スタイルは主体的なものに変わっている。このことは遠隔講習の持つ利点であると同時に、特にコミュニケーション面での変化をもたらしているのは講習支援システムの存在であることが確認できた。
第二に、講師の変化である。講師は慣れない遠隔講習に対処するために、集合講習よりも優れた教授を行うようになっている。具体的には、学習者とのコミュニケーションや学習者間のコミュニケーションの活性化に対する配慮や、教材の豊富化などが挙げられる。
このような学習者と講師の変化の相乗作用により、講習支援システムを用いた遠隔講習の総合的な評価は、集合講習よりも高いものとなったと結論できる。
以上の講義タイプと演習タイプにおける集合講習と遠隔講習の比較により、講習支援システムを用いた遠隔講習に関して以下の仮説が検証された。
- 学習者は自分のペースで学習を進めることができる
- 学習者の学習スタイルが主体的なものになる
- 講師・学習者間のコミュニケーションが促進される
- 講習に対する総合的な評価が向上する
また、検証実験前に予想していなかった結果として、遠隔講習においては学習の多様性・自由度を保証するために、さまざまな学習素材が提供されることが明らかになった。 さらに、講習システムを用いた遠隔講習の問題点も示された。実験1とは異なり、学習のための時間が確保されている学習者にとっては、自分の生活時間の中から学習時間を捻出するのは困難である。ただしこれは、学習者が自主的に学習を進めた結果として、学習時間が不足したという積極的な効果の裏返しでもあり、必ずしも致命的な問題とは言えない。また、講師が遠隔講習に慣れていないため、改善の余地が大きかったという問題点も指摘された。それにもかかわらず、遠隔講習がいくつもの点において集合講習よりも高い評価が得られたことは、講習支援システムを用いた遠隔講習の大きな可能性を示している。
以上から、改善すべき問題点も残されているものの、講習支援システムを用いた遠隔講習が有効であることが検証された。今回の実験の被験者は大学生であるが、小・中・高等学校の児童・生徒に対しても同様の結果が得られると考えられる。これが正しければ、遠隔講習支援システムを用いた遠隔講習は、一斉授業中心の学校教育を変えていく手段となることが期待できる。
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